「歴史の駅」のすすめ

■執筆者  :理事 宮地 克昌(東京観光専門学校 非常勤講師)

タイムトラベル体験を楽しむ観光・交流の拠点

今、団塊の世代を中心に、健康づくりと知的満足を両立させる歴史に着目したまち歩きへの関心が高まっています。「歴女」という言葉も生まれたように、テレビドラマや映画、ゲーム、アニメなどによって若い世代にも歴史ファンが広がっています。

そして、地域に経済的な波及効果をもたらし、活性化させる観光・交流(ツーリズム)が着目されています。歴史の視点から地域資源を見直し、保護・活用することを考え、地域の魅力を観光客にしっかりと伝えることで、宿泊や飲食、お土産品の購入、施設の見学、アクティビティへの参加などが期待されます。

また、歴史をテーマにした歴史ツーリズムは、地域ブランドの創出や経済の活性化と共に教育的にも重要な役割を担っています。未来を担う青少年が、単に知識としての歴史を学ぶだけではなく、歴史から多くを学び未来を展望する力を身につけること(温故知新)が望まれます。さらに、子供から高齢者まで世代間で一緒に歴史を学び合い、感動体験を共有することで子供たちが生きがいを感じ、悠久の過去からつながっている命と、そして未来へつながって行く命を大切にして欲しいと考えます。

「歴史の駅」の機能

「歴史の駅」の機能として①調査・研究、②情報提供、③教育・研修・体験、⑤地域ブランドの創出、⑥地域内外の連携・交流などが考えられます。

①調査・研究:歴史資源と共に新しい歴史ツーリズムに関して経済学的にも研究し、さまざまな活動につなげていきます。

②情報提供:観光客に対して対面や電話、インタネットなどでる歴史ツーリズムに関する総合的な情報を提供します。

③教育・研修・体験:講師や歴史ガイドの育成と斡旋、なりきり体験からITを利用したバーチャル体験までの歴史体験グログラムの提供、情報端末や歴史ゴーグルなどの各種ツールの貸し出しなどを行います。

④地域ブランドの創造:地域資源を歴史の視点で発掘し、歴史に裏打ちされた地域ブランド商品の開発から生産、提供・販売までを行います。

⑤地域内外との連携:地域内の歴史的な拠点をネットワークし、なりきり体験や時代食体験、商品の購入などができる施設などを紹介します。また、国内にある他の「歴史の駅」と連携した活動を展開します。

昭和30年代へのタイムトラベル(企画案)

昭和31(1956)年に竣工した大阪の通天閣や昭和32(1957)年に竣工したさっぽろテレビ塔、そして、昭和33(1958)年に竣工した東京タワーなどを昭和30年代へタイムトラベルするための「歴史の駅」としてネットワークします。

そして、亀有香取勝運商店街(江東区)、昭和記念公園の「こもれびの里」、江戸東京たてもの園の東ゾーン、船の科学館南極観測船「宗谷」、赤塚不二夫会館(青梅市)や豊後高田市の「昭和の町」、新横浜ラーメン博物館などと連携して歴史ツーリズムを活性化させていきます。

東京タワーの特別展望台では、国内外の観光客を半世紀前に誘い、ダイナミックに変化してきた東京の歴史を堪能していただきます。東京タワーが開業した翌年の昭和34年5月26日にIOC総会でオリンピックの東京開催が正式に決定しました。そして、東京は昭和39(1964)年の開催に向けて、東京は大きな変貌を遂げました。

人口や自動車の増加で、大都市の機能が十分に果たせなくなっている状況の中で、その機能を健全化して新しい時代の備えるため、東京オリンピックを“錦の御旗”として、大規模に整備が進められた歴史を体験してもらいたいと思います。

幕末・明治維新へタイムトラベルする「歴史の駅」共同提案

タイムトラベル体験をサポートする機能を観光案内所や歴史博物館、郷土資料館などに付加し、観光・交流の拠点となる新しいタイプの観光案内所を「歴史の駅」(Station of History Tourism/Time Travel Station)として位置づけます。

そして、地域内の歴史的な資源をつなぐ「地域連携」、縄文時代や戦国時代、明治維新、昭和30年代など、時代ごとに地域と地域をつなぐ「時代連携」、そして、城や庭園、古民家、産業遺産などのさまざまなテーマで国内外の地域と地域のつなぐ「テーマ連携」の3つの連携によって、歴史ツーリズムを更に活性化させます。

今、着目されるのが1867年の大政奉還や1868年の明治維新を始めとする幕末から明治初期です。150年周年になる2017年や2018年に向けて関連する自治体にJEDISとして「歴史の駅」や関連するイベントを提案しませんか?