まずはお読みいただければ幸いです。
■執筆者 小坂井 彰
■執筆日 2015年6月15日
まずはお読みいただければ幸いです。
“ある大統領のスピーチ”
会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。
ここに招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。私の前に、ここに立って演説した快きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。国を代表する者同士、人類が必要であろう国同士の決議を議決しなければならない素直な志をここで表現しているのだと思います。
しかし、頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。私たちの本音は何なのでしょうか? 現在の裕福な国々の生産と消費モデルを真似することでしょうか?
質問をさせてください。ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持ったらこの惑星はどうなるのでしょうか。
息をするための酸素はどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料・資源がこの地球にあるのでしょうか? まかなうことは可能ですか? これについて議論をしなければなりません。
なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?
マーケット・エコノミー(市場優先経済)の子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める市場社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーション(経済などの地球規模化)が世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
私たちはグローバリゼーションをうまくコントロールしていますか? ひょっとしてグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?
このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか? どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?
このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません。政治的な危機問題なのです。
現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短かく、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。
ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターとなっている世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。
このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。つまり、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです! そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれもなく政治問題であり、私たち首脳はこの問題を別の解決の道に世界を導かなければなりません。
石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。
昔の賢明な方々、エピクレオ、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています
「真に貧乏な人とは、多くを持たざる者ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」
これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。
国の代表者としてリオ会議の決議や会合にそういう気持ちで参加しています。私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことをわかってほしいのです。
根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということなのです。
私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には320万人ほどの国民しかいません。でも、1300万頭の世界でもっとも美味しい牛が私の国にはいます。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は肉や牛乳、乳製品の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の80%は農業に適しています。
働き者の我が友人たちはかつて8時間働いていました。しかし今では6時間しか働きません。しかし6時間労働の人は、その後もう一つの仕事をしなければなりません。その結果、以前よりも長く働くことになってしまいました。なぜか? バイク、車、などのローンを支払わないといけないからです。毎月2倍働き、ローンを払っていったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。
そして自分にこんな質問を投げかけます。これが人類の運命なのか? 私の言っていることはとてもシンプルなものですよ。発展は幸福の対抗にあってはいけないのです。(発展とは幸福の表面をすり抜けていってはいけないのです) 発展とは人類に本当の幸福をもたらさなければならないのです。愛、人間関係、子供の世話、友達を持つこと、必要最低限のものを持つこと。発展の結果としてそうしたものがついてこなければなりません。
人生こそ私たちが持ちえるもっとも重要な宝物です。だから私たちが環境のために戦うのであれば、何よりも最初に優先しなければならない環境の要素とは、「人類の幸福」なのです。それこそが環境問題なのです。
ありがとうございました。
以上
ムヒカ大統領のリオ会議スピーチ全文: (訳:打村明)(原語はスペイン語)
これは「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」ということで話題になっているのでみなさまに紹介させていただきました。すでにご存知の方も多いのかと思いますが改めてまだご存知でない方々に是非お読みいただければと思っています。
スピーチの舞台は2012年6月20日から開かれた「リオ+20」という地球についての国際会議がブラジルのリオで行なわれたときのものだそうです。1992年、同地で行われた「環境と開発に関する国際連合会議(United Nations Conference on Environment and Development=UNCED)」の20年後に行なわれたもので今回は、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)(United Nations Conference on Sustainable Development (Rio+20))」と題され行なわれたもので1992年以降、「リオ+5」(1992年から5年後の1997年開催)、「リオ+10」(10年後の2002年開催)も行なわれているそうです。一般的には「地球サミット」と呼ばれているそうです。
この中で、各国首脳がスピーチをし、南米の小国ウルグアイ(人口約300万人)のムヒカ大統領が行なった演説はかなり遅い時間帯で聴衆もほとんどいなかったそうですが、しかし上記の内容で大変、感動的だったということです。その後、インターネットを通じてひろまって感動を与えているということになってます。
私が感じましたことは・・・
これからの日本は、世界はどうするべきなのか?
人生は人に必要以上の欲があったり競争があるからこそ楽しいのではないか?
環境問題は人間の生き方を考えることなんだ!
ネットには情報がたくさん載っていますのでお調べ頂きご一考いただければければとおもいます。