【「イベントの基礎知識」が、地域のコミュニティ活動に活力を・・・】
■執筆者 理事 小林 公一
■執筆日時 2009年1月22日
ある地域で「イベントの基礎知識」を学習して、今後の、地域コミュニティ活動に役立てようとしている事例を、ここに紹介します。
埼玉県越谷市は、都心から30km圏に位置する、人口32万人程度の県・中核都市の一つです。江戸時代は、日光街道三番目の宿場町で、江戸の台所とも言われる多くの農耕地。拡大する住宅地。幾筋もの河川。点々と残る屋敷林や自然。学園都市。梅林公園・花田苑(日本庭園と能楽堂)や宮内庁後猟場。そして、日本一の巨大なショッピングモール(越谷レイクタウン)。・・・などなど。
これらの、多様な地域性と人口数から、「地域コミュニティづくり」も、市内を13の地区(公民館区による)に分け、それぞれの地域の特性を生かした、市民活動が展開されています。即ち、同じ市内にあっても《特色ある地域づくり》を目指し、お互いが競い合うように努力をしているのです。
そんな環境にあって、市・行政側では、「コミュニティ・リーダー養成講座」や「各地域コミ協の年間活動報告会」などを開催、住民活動を支援・指導しています。が、「養成講座」では、他の地域(他県・埼玉県内の他地域)のコミ協活動の実態・活動実績の報告などがほとんどであり、また、「年間活動報告会」でも、ここ数年、自他ともにあまり代わり映えのしない、同じような内容の報告が目立つようになりました。したがって、地区コミ協会員の中からは、本当のコミュニティ活動に役立つような内容を、もっと実のある勉強会(講演会)を企画して欲しいとの声が上がり、中には、市に頼らずとも自分達の力だけで出来ないだろうかとの声も聞かれました。
しかし、一地区が独自に、著名人を講師に迎えての開催となると、費用の点で、予算枠もなく実現が困難、とても無理だとの溜息が漏れます。小生が居住している大袋地区は、市内13地区の中でも最大の人口を抱え約6万人が居住する地区です。当然ながら、多才な人材が数多く在住することは十分に考えられます。そこで、なにも高額な費用を使い、わざわざ他方より講師をお迎えせずとも、地域在住者の内で、種々の幅広い知識・経験を持つ人に、講師役をお願い出来れば、実現は可能なのでは・・・。との提言をしてみました。
それがまた、地域住民間の交流を活発にして、人材の発掘・育成に繋がるという効果も期待されるということが協会員にも認められ、先ずは、現在の地区コミ協の活動に協力されている人々の中から講師役を選び、早速、講演会を開催することになりました。講師役は、結局(言い出しっぺ先陣を切るべき)ということになり、第1回目は小生が講師を務め「コミュニティ講演会」を昨春(H19年度事業)に開催し、そこでは「地域イベント」が地域振興の起爆剤と成り得ることや、その「イベント」の基礎知識の一端を学習しました。
結果は、概ね好評で、イベントの企画や運営面をもう少し詳しく勉強したいとの声が多く寄せられ、続編として、第2回目の講演会を昨秋(H20 年度事業)に開催致しました。それぞれ50~70名程の参加者があり、講演会の後には、各回で2名ずつの方が「地区コミ協」活動に新たに参加することになり、会員増にもつながりました。
その際に実施した、アンケート調査の結果を見ますと・・・
・専門的な事柄を分かり易く語ってもらい、たいへん良かった。
・自分にとって知らない世界だったので、とても勉強になった。
・イベントの開催には、こんなにも深い内容があったかと、改めて感心した。
・イベントの企画づくりを、分かり易く講義してもらい、参考になった。
・イベントの歴史を学び、その流れがよくわかり、楽しかった。
・知ってるつもりが、実は何も知らなかったことに気づいた、参考になった。
・イベントには、いろいろな目的や種類があることが分かった。
・もっと時間がほしかった、また、続きが聞きたい。 等々、
この「コミュニティ講演会」自体が《会議・集会系イベント》であり、一つの「地域イベント」として、コミュニティ活動への参加意識と連帯感、協働体制やネットワークづくりなどの、ムーブメントを始動させる〈はずみ〉・〈きっかけ〉を与えることになったようです。
即ち他の地域とは異なるコミュニティの創造を目指すためには、自分達の地域(大袋)を、どんな地域にしたいのかという「地域アイデンティティ」を確立することが前提になるという考え方が、よく理解されてきたようです。
そこで、「地域アイデンティティ」を確立するためには、自分達の住む地域の歴史や伝統、文化の推移を知ることが、まずは必要だろうという考えから、地域の「今日までの歩み」を皆で認識し、共通の知識として持つことを目的として、来る2月上旬に、第3回目の講演会を開催することになりました。
講演内容は「半世紀前の大袋は・・・?」をテーマとし、50~70年以前の、即ち、戦中・戦後の時代を中心に、当時の大袋地域の諸々を、この地で生まれ育った数名の人に、パネル・ディスカッション形式で、それぞれの実体験に基づく思い出として、語り合ってもらうことにしたのです。この発想は、越谷市が昨年の11月に市制施行50周年を迎え、記念事業の一つに50年間の歴史が編纂され、市民に紹介されたのをヒントに、それ以前の事柄も、この際知ってもらいたいという考えからでした。
なお、今回のイベントは、【~梅の郷~大袋今昔物語】と銘打ち、プログラムを講演会だけではなく、全体を三部構成として「コミュニティ講演会」を中心に、第一部で、地元中学校・茶華道部の生徒の「琴の演奏」を。また、第三部には、同中学校・吹奏楽部の生徒達による「ブラスバンド演奏」を配し、世代を越えてより多くの住民が集い、交流の場となるように図りながら、「地域コミュニティ」の充実に向け、更に一歩・大きく踏み出そうとの意気込みを持って準備を進めています。
さて、どんな結果・成果が得られるでしょうか。楽しみです。 以上