万博から生まれたもの(雑学)
■執筆者 副会長 北本真奈
■執筆日時 2009年6月1日
来年2010年5月、上海万博が開幕します。また今年10月に2016年オリンピック・パラリンピックの開催都市が決定します。現在、東京を始めシカゴ、マドリード、リオが立候補しており、IOC評価委員の各立候補都市調査も終え、外交面で大詰めを迎えようとしています。
ところで、万博とオリンピックが意外な所で関係があったことはご存知でしょうか。
万博の歴史は約150年。万博の歴史を語るとき1851年に開催された世界初のロンドン万博と1889年のパリ万博がよく取り上げられます。ロンドン万博では鉄と硝子の建築「クリスタルパレス(水晶宮)」が建造され、パリ万博では都市整備や「エッフェル塔」が建築されたことは著名です。19世紀に起った新しい産業の波は蒸気機関車や自動車、電機など新しいエネルギーを生み出し大量に製品ができるようになり、安くて良い製品が沢山できて、広く世の中に行き渡れば、みんなの暮らしが楽になって、豊かな社会が生まれる・・・といったユートピアの実現を目指していたようです。また、19世紀から20世紀初頭にかけてヨーロッパ全土で革新的な芸術運動 アール・ヌーボーにみられるように建築・美術といった分野に新しい流行を生み、その後デパート、観覧車、エレベーター、動く歩道、エンターテインメント、ブランド商品、テレビ、電話等、私たちの生活に大きな影響(普及)を世界に広げたのも万博でありました。その時代の最新・最先鋭な世界の文物、情報が集い、一堂に会することで、誰もが新しい世界を発見できるイベントへと成長していったように思えます。
そうしたなか、1896年に第1回のアテネ大会(近代オリンピック)が行われましたが、1900年のパリ大会では、パリ万博の付属国際競技大会として、1904年のセントルイス大会でも博覧会のアトラクションとして開催されていたようです。
優れた製品、名産品、商品にメダルを授与し栄誉を称える万博同様に、当時のオリンピックも競技種目ごとに競い合って、勝者にはメダルを授与するアイデアは万博から誕生したもののようです。また、1889年パリ万博の開会式における入場行進、国旗掲揚、国歌斉唱、開会宣言、メダル授与などに、近代オリンピックの父ピエール・ド・クーベルタン男爵は強く感銘を受けたと言われています。万博は今や世界の一大イベントであるオリンピックにも影響を与えたようです。
万博は人類が築き上げてきたその時代の技術・芸術の頂点を世界に向かって発信する機会を提供してきました。
来年、上海では「より良い都市、より良い生活」をテーマに上海万博が開催されます。大阪万博ではファストフード、カジュアルファッションなど、数多くの生活文化が生まれ、それを機に一般に広がったと聞いています。愛知万博では、環境提案が数多くなされました。上海万博から世界に向け、どのような新しい文化やムーブメントが生まれ、普及するのか、楽しみです。