“YUMI KATSURAショー” 鑑賞記
“YUMI KATSURAショー” 鑑賞記
BEYOND EAST&WEST
~日本の伝統工芸技術の革新と創造を世界へ~
執筆者 平家良美
執筆日 2018年11月20日
2018年2月20日(火)、迎賓館赤坂離宮にて、ファッションデザイナー桂由美さんのショーが開催された。京都のショー開催を手伝っている縁により、毎年パリコレで発表(1月末)された作品のショーを拝見している。
桂さんが永年(本年で53年)、デザイナーとしてのキャリアにより、日本で初めて迎賓館赤坂離宮でのショーの開催を許可されたという。本館が国宝故に開催にあたっては大変なご苦労があったと伺った。いわゆる“ユニークヴェニュー”そのものの会場で開催されたショーの鑑賞記をまとめてみた。
■ 迎賓館設立の沿革
「明治42年(1909年)に東宮御所として建設され、明治の建築家 片山東熊により当代の一流建築家、美術工芸家が総力あげて建設されて、日本で唯一のネオバロック様式の西洋風宮殿建築です。戦後十数年たって、外国の賓客を接遇するための施設として昭和49年(1974年)に現在の迎賓館赤坂離宮が完成しました。平成21年(2009年)に国宝に指定されました」(館長挨拶と公式パンフレットより抜粋)
会場は「羽衣の間」「彩鸞の間」でショー及び展示が開催された。天井一面に謡曲の「羽衣」が描かれている。
ゲートから本館入口まで約200m。全体の広さは東京ドーム2・5倍ある。「パリでは古い建物でショーの開催ができる。日本でも是非こちらで開催したい」と、桂さんが永年願い出ていました。「日本の“和の文化”を国際発信する特別な舞台として『迎賓館赤坂離宮』が相応しい、発信するには特別な舞台としてようやく了解を得て開催の運びとなりました。永年の願いがようやく叶えられました」(桂さん談)
■ 「日本の美」をコレクションで発信し続ける!!
1980 年以降、桂さん自身の海外でのショーが増え、特に「日本の美」を発信し続けて
いる。
2012年に「YUME YUZEN」と題し、作品を発表。2015年は琳派400年記念にあたり、多くの琳派の画家が描いた作品をモチーフにするなど、琳派にインスパイアされた作品を発表された。筆者も日本画の作家選びや、京都開催におけるプロデュースをさせていただいた。
爾来、伊藤若冲、俵屋宗達、鈴木基一などの絵画作品をモチーフに大胆な作品をパリコレで発表し、ヨーロッパやアラブの人々に大きな影響を与えている。
2018年は葛飾北斎を取り上げている。まるで歩く美術館のようである。今回のプログラムは「伝統と革新の両立」をモットーに、日本の伝統技術や文化継承にこだわり続けるユミカツラ、根底にある世界に誇れる日本の自国文化を守りたいという純粋な思い。「西洋建築の中に日本の粋を結集させた迎賓館赤坂離宮を舞台にして最高のシナジー効果を堪能した舞台である」(パンフレットより一部抜粋)
■KATSURA PARIS COLLECTION 2018 “BEYOND EAST&WEST”
~日本の伝統工芸技術の革新と創造を世界へ~
ショーは桂さんが近年取り組んでこられた「きもの文化」、日本の伝統工芸技術作品の数々が紹介され、すべてパリコレで披露されたものである。
■ 「彩鸞の間」の展示室
ショーが始まる前に「彩鸞の間」を拝見したがどの作品も“エレガンス”につきる。桂さんの作品づくりの本質が現れている。エレガンスの本質について根源的なところをグレースケリーとオードリー・ヘプバーンから学ばれたと聞く。若い頃に、グレースケリーにインタビューをして、「立ち居、振舞い、その滲み出る優雅さから、エレガンスということばはこの人のためにある」と、後述している。
会場と作品の醸し出す優美さに圧倒された。私の前を片岡愛之助、藤原紀香夫妻が作品を鑑賞していた。他にも著名な女性評論家や女性政治家など多士済々なゲストが招待されていて華やかな装いに、しばし非日常を堪能した。
■ 日本の伝統美が蘇る!!
―「日本の和と西洋」の融合を世界に発信」―
作品は友禅、西陣織、和紙、竹、墨絵、絞り、金銀糸、切り絵、墨絵、刺繍など、日本の伝統美を洋のモダンにアレンジしたものを発信されている。
2012年「YUZEN TODAY」、2013年「YUZEN WAVE」,2013年「ROCK THE YUZEN」
2015年「GLORIOUS RIMPA」,2016年「MAGIC ORIENTAL GOLD」、2017年「自然の目覚め」、そして2018年「BEYOND EAST &WEST」
どの作品やテーマを捉えても京都ゆかりの作家や伝統工芸とは切っても切れない縁がある事が分かる。俵屋宗達、尾形光琳、鈴木基一らにインスパイアされた作品がこれ程までに鮮やかに蘇るとは。これからも桂さんから目が離せない。あっという間のショー鑑賞に、400年の時が駆け抜けていった。このような極上の作品に触れる機会があるのは、最上の喜びである。さまざまなヒントが得られたたファッションショー鑑賞であった。
© YUMI KATSURA INTERNATIONAL
以上