訪日外国人とLCC II

■執筆者 JEDIS理事 田中康資
■執筆日時 2018年7月13日

訪日外国人数が1,000万人を超えた2013年以降、いわゆる「爆買い」で注目された訪日外国人の急増が社会的関心事となり、2015年に「訪日外国人とLCC」というテーマで本リレートークに投稿した。今回はその後の動向を検証してみたい。

政府は2016年までに2,000万人の訪日外国人を見込んでいたが、2015年は前年比47.1%増の 1,973 万人とほぼ目標を達成し、日本政府観光局(JNTO)が統計を取り始めた 1964 年以降、最大の伸び率となった。
その後2016年2,438万人、2017年2,869万人と増加し、2018年は3,000万人が現実のものとなりそうである。さらに2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会時の目標である4,000万人も、達成可能な勢いである。
次に控える2030年6,000万人の目標も、政府は「現在すすめている施策を継続・発展させることで、間違いなく実現する」としている。

2017年実績では、訪日中国人 が最も多く全体の 25.6%を占め、2015年の「爆買い」ピーク時ほどではないが、訪日中国人の国内旅行代金は全体の60%を占めている。
訪日外国人の消費行動は「モノ(商品)」から「コト(体験)」へシフトしつつあり、また伝統的なゴールデンルート(東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪の周遊コース)から、地方を目的に日本を訪れるリピーターが増えている。
2017年度は、訪日外国人の地方空港発着便利用者が、前年度比8割増加した。
地方への訪日外国人の増加により、地方経済は公共投資から観光消費への変換が期待される。

来日目的は観光・レジャーから、今後は国際会議等の誘致によるMICE (Meeting、Incentive tour、Convention・Conference、Exhibitionの頭文字をとった造語)や、グリーン・ツーリズム(農山村での滞在型活動)、スポーツ・ツーリズム(「観る」スポーツ、「する」スポーツ)、メディカル・ツーリズム(人間ドック検診・治療等に伴う医療観光)などが、キーワードになると考えている。

国内のLCC専用旅客ターミナルビルは、関空(2012年)、成田(2015年)がすでにオープンし活況を呈している。成田は2019年度を目途に増築、また中部国際空港は2019年上期に新規供用開始を予定している。

ANA傘下のLCC、ピーチ・アビエーションとバニラ・エアは2019年度末までに統合し、東南アジアなどへの中長距離路線就航を発表した。またJALは、2020年に中長距離路線を運航するLCCへの参入を発表した。本邦LCC間の競争は中長距離路線をテーマに、今後ますます激しくなることだろう。
アジアで中産階級が増加していること、旅客ターミナルビル施設がさらに充実すること、また航空会社の新規路線就航・便数増・低運賃化により、訪日外国人のLCC利用はさら拡大すると予想している。

以上

 

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VNL 機体
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VNL 機体 成田空港 駐機場
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VNL 機内
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VNL カウンター成田空港
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VNL カウンター新千歳空港