ガラポン。

 

■執筆者 関東地域本部 ㈱ジェイアール東海エージェンシー 若原 和貴

■執筆日 2016年5月6日

ガラ~ガラ~ガラ~。「おめでとうございます!500円分の食事券が当たりました!」
先日、会社近くのテナントビルへランチに出かけたら、ちょうどランチ利用客向けに福引きイベントを行っていた。抽選券を手に会場へ向うと、そこにはすでに長蛇の列が。ランチを済ませた利用客たちが一気に押し寄せ、「残念でした~」「おめでとうございます!」と響きわたる声のもと、着々と抽選会は進んでいった。それは、「ガラポン」と呼ばれる回転式の抽選器が1つ置いてある、昔からよく見かけるありふれた抽選会風景だった。
ただその日、ビル内の飲食店舗はどこも盛況であり、行列が多数できている。「今日は抽選会があるみたいだから、あの店に行こうか」という具合に、こんな小さなイベントでも販促効果があるのだと改めて感心させられた。

そもそもガラポンやガラガラと呼ばれる抽選器は、正式には「新井式回転抽選器」という名称らしい。
そのルーツは、大正時代、帽子屋の店主新井卓也氏が、お客さまへのサービスとして福引きを行う際に、抽選器を考案した。帽子を入れる箱で、抽選器をつくり、それがあの八角形の抽選器の原型になったという。その福引きは評判となり、後に抽選器専門の会社(東京抽籤器研究所)を立ち上げ、専売特許を取ったという。(イベントのプロのみなさまには、釈迦に説法ですね)
いつ、何度やっても、あのガラポンを回す時の期待感と、一瞬の緊張感がたまらなく楽しい。しかし、当たってもSNS上に載せるような賞品でもないし、今どき、そんな話題になるようなコトでもない。ただ、あそこには確実に行列ができ、活況を呈していた。

目的、場所や時間、場面や気分などに応じて、イベントの手法は多種多様にあるが、大きな展示会も、PRイベントも、福引きも、規模の大小にかかわらず、いつの時代にも、イベントは、シンプルで、分かりやすく、人が喜び、説明いらずのコトがやはり一番大切ではないだろうか。
ちょっとした「デキゴト」が、ちょっとうれしいコトになり、人々に少し豊かな時間を提供してくれる。そんなあの光景にイベントの原点を見た。 
そういう意味でも、ガラポンは約100年にもわたって存在し続けている最強のイベントツールの一つであろう。最近では、タブレット型や電子型など、抽選方法も進化しているが、私はやっぱり、あの「ガラガラ」という乾いた音とともにハンドルを回す瞬間のドキドキ感がたまらなく好きである。
「拡散」や「共創」は生まれないかもしれないが、あの一瞬の高揚感は、ガラポンでなければ味わえない時間なのだ。

現在、私のイベント関連業務として、東京駅八重洲口にある当社所有のイベントスペース販売に携わっているが、自分の仕事にも何かヒントがもらえたような気がした日であった。

■写真:

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東京駅イベントスペース